オープンソースとビジネス、この二つのキーワードは非常に相性が悪いイメージがあります。オープンソース・ソフトウェアを使ってクライアント企業向けにソフトウェアを開発したり、自社の運用を手助けしているケースはありますが、自社でオープンソース・ソフトウェアを開発し、それを収益源としているケースは稀ではないでしょうか。
しかしもしそれが実現できたとすれば、これほどまでプログラマーにとって幸せなことはないでしょう。今回、その好例となりえるZabbix(オープンソースの統合監視ソフトウェア)を開発、提供しているZabbix Japan代表の寺島氏にその秘訣を伺いました。
Zabbix Japan代表 寺島氏
趣味からはじまってビジネス化するまでに7年!
— オープンソース×ビジネスが成り立つためには?
Zabbixの開発は98年くらいから個人プロジェクトして開始されています。そこから7年以上かけて継続的に開発し、コミュニティのフィードバックを受けながら成長してきました。その結果として2005年に法人化し、今があります。
元々はビジネス化を想定していませんでしたが、インフラ系、ビジネスで役立つソフトウェアと言うこともあって保守やサポートを求められる声はあったようです。それもあって法人化し、適切にサポートや継続的な開発を行える体制を整えた訳です。
逆説的ですが、ビジネスが成り立つかどうかはそういった初期の情熱があったからこそと言えるのではないでしょうか。
— オープンソース・ソフトウェアをビジネスで活かす上で苦労とは?
オープンソース・ソフトウェアは商用製品と違ってライセンス販売ができないという大きな違いがあります。そのためビジネスとして保守契約やサポート、トレーニングがあるというのをしっかり宣伝し、知ってもらう必要があります。
— オープンソース×ビジネスの最近の動きについて
去年くらいから幾つかの面白い動きがあります。例えばnginx(NGINX Plus)やchef(Enterprise Chef)、MariaDB(MariaDB Enterprise)などがエンタープライズ向けのサービスを提供するようになっています。これらのプロダクトが有償版に乗り出したのは大きく3つの要素が関係していると思います。
ワールドワイドに展開している
継続的な開発ができている
フィードバックが受けられている
この3つがうまく回っているオープンソース・ソフトウェアは今後ビジネス化が狙えると思っています。ワードルワイドが基本なのはフィードバック量がまったく違ってくるからです。
その意味において日本発というのは意味をなさないとも言えます。最初からワールドワイドに英語で情報を発信しフィードバックを得ていくオープンソース・プロジェクトでなければならないでしょう。今後を考えると面白そうなのはfluentdですね。fluentdを提供(スポンサード)するトレジャーデータ社は日本人CEOですが、ワールドワイドに展開していますので日本といった肩書きは意味をなさないと思います。
オープンソース最大の魅力はフィードバック
— オープンソースであることの魅力は何でしょうか?
オープンソース・ソフトウェアとして自社製品を公開する魅力は何と言ってもフィードバックにあると思います。クローズドな商用製品では設計からテストまですべてベンダー側で行います。それに対してオープンソースの場合はコミュニティからの要望をうけて設計され、その結果を公開してユーザが率先的にテストし、フィードバックを得られるというサイクルが生まれています。
— 日本ではあまりフィードバックが積極的ではないように見えますがいかがでしょうか?
確かにZabbixへのフィードバックにおいて英語圏に対してフィードバックを行っているのは稀です。これには二つの側面があると考えています。1つは英語の問題、もう一つはインフラエンジニアにおいてプログラミングが詳しくない人が多いという印象があります。前者はともかく、後者についてはオープンソース・ソフトウェアでありつつも内部の仕組みについてソースコードが追いきれないためにバグなのか自分の設定に問題があるのか分かりづらいという問題です。
面白いことにZabbix Japanのパートナーを通じて保守・サポート契約されているクライアント企業の場合、有償であるということもあって問い合わせという形でのフィードバックが盛んに行われています。そういったフィードバックはZabbix本社に報告して次回以降のバージョンアップに取り込まれています。
— 9年経ってコミュニティはどう変化しましたか?
初期の頃はインストールができないといった最初のステップレベルの問い合わせが多かったですが、今はヘルプやユーザ同士のセルフサポート、UIのローカライズへの意見募集、イベントへの参加などが主な活動になっています。
もう一つは会社を設立したこともあって、ビジネスレベルでのサポートや問い合わせといったZabbix Japan、パートナー、クライアント企業との協力体制も作られています。
監視トレンドは自動化
— 過去と現在で監視のトレンドは変化していますか?
2005年当時は疎通やアプリケーションの死活監視がメインとなっていました。そして物理サーバが基本でした。それが現在はクラウド、仮想環境が主なトレンドになっています。そうなるとサーバの増減は自由に行えるようになっており、監視対象もダイナミックに変化するようになっています。
Zabbixにおいても監視対象を自動的に見つけてきて登録するといった自動化が大きなポイントになっています。
— クラウドの時代になって企業環境は変化していますか?
大きな変化としてはクラウドと物理サーバといった具合に複数のサーバ環境が混在しているというのがあります。しかし監視としては一元管理したい、その複数環境下に対応するというニーズは今後ますます強くなっていくだろうと思っています。
ネットワーク、サーバ環境はより複雑化していますので安定したサービス提供を継続するためにもZabbixを使って欲しいと思います。
[PR] Zabbix Japanの今
Zabbix Japanではオープンソース監視ソフトウェアであるZabbixの商用サポートを提供しています。技術サポートにおいてはソースコードを熟知しているZabbixエンジニアが直接回答しています。
これからZabbixをはじめる方からスペシャリストの方まで幅広くZabbixをさらに使いこなせるようにするためのプロフェッショナルトレーニングプログラムを開催しています。これは経験豊富な講師が行い、質疑応答を含めてトレーニング満足度において96%の方々が参考になったと回答しているプログラムになります。
パートナー会の様子
日本では20社を越えるパートナー企業がおり、安心できるサービスを提供しています。Zabbixサポート、コンサルティング、導入まで提供が可能となっています。これからZabbixによる監視をはじめられる企業はもちろん、既に導入されている企業においてもより活用するためのソリューションが提供できるはずです。ぜひお問い合わせください。詳しくは下記URLをご覧ください。
Zabbixオフィシャル日本語サイト :: エンタープライズクラスの分散監視オープンソースソリューション
次はMOONGIFTの運営で大事にしている3つのことです。これまでの運営を振り返って、常に気をつけている3つの事柄について触れます。
10周年記念特集!「オープンソース×10年」
Zabbix Japanに聞いたオープンソース×ビジネスを成功させるための3つの基本
MOONGIFTの関連記事